イラストの著作権譲渡のお仕事は受け付けていません。その理由とは…。

こんにちは。イラストレーターのチノネです。 

私はイラストのお仕事をする際に、事前に条件や内容を確認・交渉をするのですが、

基本的に著作権譲渡の条件のお仕事はお受けしていません。

なぜならイラストレーター にとって今後お仕事を続けていく上で、著作権はとっっっっても大事な権利だからです。

イラストは「制作費」だけではなく「イラストを使用する権利」を販売しています。(それを使用料と言います。)

著作権を誰かに譲渡してしまうということは、「イラストを使用する権利」を破棄して、

本来もらえるはずの対価がもらえなくなってしまうということなのです。

それってどういうことなのか、私が著作権を譲渡をしない理由や考えをまとめてみました。

イラストを発注される方で、あまりこういう話を詳しく知らずにイラストレーター さんやクリエイターの人に

交渉してしまう方もいるかと思うので、参考にしていただけたらうれしいです!

著作権って何?


著作権とは、イラストや音楽・映画・漫画・小説など、作品を作った人が持つ権利です。

この権利は特に登録などすることなく、作品を作ったら作者に自然に付与される権利です。

この法律により、著作者以外の人が著作物を勝手に公開・使用・販売することはできません。

作った人が「著作権法」で、その著作物の利益を法律で守られているということですね。

イラストは描いてもらったからといって、自由には使えません。

契約した範囲内で使用するのが決まりなのです。

芸術や文化を豊かにするために著作権がある


著作権法の第1条に、

「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作権等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする」

とあります。

これはざっくり簡単に言うと、著作者(作った人)の権利を守ることによって、

芸術や文化を豊かに発展させていきましょう!ということだと思います。

なので、著作権の譲渡を希望している方には今一度、考え直してみて欲しいのです。

著作権を譲渡したら、何に使われているか把握ができない。使用料金も請求できない


著作権譲渡をしてしまったら考えられること。

一つは、何にイラストが使われているのか、作った本人が把握できなくなってしまうことです。

イラストは媒体によって使用料が変わります。(詳しくはこのブログに書いています。)

例えば雑誌のカットのイラストの使用料が大体5000〜10000円くらいなのですが、

広告などのポスターになると10万円〜くらいになったりします。

イラストが使われる場所によって、集客効果やイメージなどが変わり、価値に変化が出てくるためです。

もし著作権を譲渡してしまうと、

例えば雑誌のカットで描いたイラストだったのに、

後からポスターで使用されても追加で使用料を請求できなくなってしまうのです。

もちろん全く関係ない案件に使用されても何も文句は言えません。

著作権を譲渡すると、譲渡した相手が使い放題になってなってしまうということなのです。

そんなに広く使われる権利を数千円で譲渡してしまうと、イラストレーター側の損害があまりにも大きいのです。

使用履歴を管理できなくなると、広告のお仕事ができなくなる


イラストの使用履歴などを管理できないと、広告のお仕事ができなくなる可能性があります。

イメージが大切である広告のお仕事は、競合他社のバッティング制限があることが多いので、

もし自分の知らないところで同じ競合のクライアントの広告にイラストが使われてしまったら、

損害賠償を請求されることもあります。

なので、使用履歴や使用期間を管理できていないと広告のお仕事はできません。

そう言う理由もあり、広告のお仕事は比較的金額も高い場合も多く、

それで生計を立てているイラストレーターにとっては死活問題になりかねないのです。

(バッティングについて詳しくはこのブログに書いています。)

自分のイラストとして公表できない


著作権を譲渡したイラストは、譲渡した企業のものになってしまうので、

自分のイラストとして、WEBサイトやSNSで公表することができなくなります。

(譲渡していなくても、たまに公開NGな案件もありますが)

今後のお仕事のサンプルとして紹介できなくなるので、イラストレーターとして営業することがとても不利になっていきます。

自分のイラストなのに公表できないなんて、 すごく悲しいですよね…。

イラストを転売される可能性もある


著作権を譲渡してしまったイラストは、勝手に転売される可能性もあります。

自分の作った物なのに他人の利益になってしまうなんて、

もうこうなったらイラストレーターは損害だらけになってしまいます。。。

「著作権譲渡」ではなく、「使用許諾条件」を話し合いませんか?


以上のことが起きてしまう可能性があるので、私は著作権を譲渡しません。

クライアントの方も恐らく、こう言うリスクがあると言うことを知らずに

著作権譲渡の話をしている方も少なくないと思います。

 

「大きなキャンペーンなどで使用範囲が決まってなくて、いちいち連絡するのが手間」

「いろいろな媒体に使用したいけど、コストカットしたい」

 

などの理由があって譲渡を希望しているのだと思いますが、

一度譲渡してしまうと、イラストを発注された担当の方が転売などする気はなかったとしても

その担当者の方が退職され担当者が変わったりしたら、その後イラストがどう使われるのかはわからなくなります。

なのでそのことも考えてもらえると非常に助かります…!

 

とは言え、せっかく描いたイラストをできる限り多く使って欲しいと思いますので、

「著作権譲渡」ではなく、使用媒体や使用期間の調整など、別の条件でご相談いただければと思っています。

ご予算によって「案件内で、使用期間を区切って使い放題」など使用条件を決めてのご提案することもできます。

できる限りしっかりご希望をお聞きして、お互い気持ちよくお仕事できたらなと思っておりますので、お気軽にご相談ください!

 

そしてイラストレーターの方も、著作権譲渡の話があったときに、リスクの話をしっかり説明できれば

わかってくれることが大半だと思うので、ぜひ参考にしてみてください〜!

(お仕事が流れてしまうこともありますが、その時はご縁がなかったとあきらめて切り替えています…!)

 

 

ちなみに私の所属しているイラストレーターズ通信のブログにも、イラストの著作権譲渡について書かれています。

お時間ある方はそちらも合わせて見てみてください。 →著作権譲渡にNO!